謝恩会 その1
長女が無事、幼稚園を卒園した。
あんなに小さかった長女が、遂に幼稚園を卒業したのである。半人前の父親ではあったものの、何とか一つの節目を過ぎて、ほんの少しホッとしたのであったが…。
実は、今回の卒園は色々とそれどころではない事情もあったのでお話ししたい。
始まりはちょうど一年前であった。
画伯の子供達が通う幼稚園では、卒園式の後に年長の保護者が主催者となって、幼稚園の先生方へ感謝の気落ちを込めた「謝恩会」をやるのが通例となっている。
そして妻が今年の謝恩会の委員になった。
妻は人前で何かをやったり、主体となって計画を立てるのが苦手なタイプなので、不安そうであった。一方、画伯はそういうイベントを計画するのが好きだし、どちらにせよ他人事なので「ええやん、いい経験になるで」と適当に励ましていたのであるが…。
まさかカウンターキッチン越しに火の粉が降りかかってくるとは予想もしなかったのである。
どうやら、お世話になった年長の先生をテーマにしたラップを作れないか、ということであった。
知らない方のためにお伝えすると、画伯は今でこそ絵を描いているものの、元々は音楽畑の人間であった。ある時に急に「ラップでも作るか」と思い立ち、それならラッパーぽい名前を、ということで考えたのが、今ではお馴染みのペンネーム「MTKC」である。それから1年に一度のペースで会社の後輩をネタにしたラップを作り、結婚式の余興で披露したこともあったのだが、まさか幼稚園の謝恩会用にラップを、しかも（およそラップに興味がなかった）妻から依頼されるとは思いもしなかったのである。
「まぁ音楽って水物だから、出来る時と出来ない時があるのよね。そう簡単に「やるぜ」とは言えないよ」と言った画伯であったが
ラップは2日で完成した。
その後、謝恩会委員のママさん達からたくさんの要望（ダメ出し）を頂きながら2番のリリックを追加し、2月には全て完成。ムービーも、先生達の写真のスライドショーだけでは面白くないであろう、と
MTKC自ら監督となり、PVまで撮る始末。
そして卒園式が近づいてきたのであるが、大きな問題が発生した。そう。コロナウィルスである。
（続く）
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